2015年07月22日

アケメネス朝ペルシア ゾロアスター教1 ゾロアスター教の誕生

 メソポタミア文明とエジプト文明を飲み込んだアケメネス朝ペルシアとはどのような国なのでしょうか。

 アケメネス朝ペルシアは、インド・ヨーロッパ語族に属するペルシア人が建てた国で、この一族が建てた、最も古い国はヒッタイトです。一時はバビロニアやエジプトといった地域の強国と覇を競ったヒッタイトが海の民に滅ぼされた後、メディア王国のように力を発揮した王朝もありますが、アケメネス朝ペルシアには遠く及びません。

 ペルシアについて書く前に、極めて重要な出来事について述べる必要があるでしょう。

 紀元前13世紀〜7世紀頃、ザラスシュトラ(Zarathushtra)(「黄金の光」の意味。「黄色のラクダ」との説もあり)と名付けられた男の子が生まれました。ギリシア語を更に英語読みしたゾロアスター、あるいはドイツ語でのツァラトゥストラとしても知られるこの人物は、後世に多大な影響を与えます。そうした人物に相応しく、生まれた時に笑ったという伝説があります。ザラスシュトラは20歳で出家し、30歳で啓示を受けて既存の宗教を大きく変えます。

 彼の開いた宗教がゾロアスター教で、その最大の特長は善悪二元論です。後に成立する一神教は、全ての力の根源がただ1つの存在に集約されます。ですから、世界を造るのも神です。全ては唯一絶対の神から生まれ出づるのです。善悪二元論では、力の根源が2つありますから、その分だけ神は絶対的な存在ではありません。

 二元論は一元論よりも世界を楽に説明できます。

 多神教は楽ですよね。善でも悪でも何にでも神が居て、自分は好きな神を信じれば済みますから。一元論ですと、この世の良きことは当然としても、悪しきことも神から出なければなりません。悪の存在、病、苦痛、そして死。では、神に匹敵する敵が居ることにすれば良いでしょうか?キリスト教におけるサタンの存在のように。

 いえ、それでも解決にはなりません。神は全てを創った、無謬の存在です。そうした世界にあっては、サタンすら神により創られたとしなければ矛盾が生じてしまうのです。もしサタンの力が神の望みを打ち砕くほど強力ならば、神はサタンよりも力を持たないことになってしまいます。唯一神が仮に善の世界を創ろうとしたのに現実には悪が存在するなら、神は無能か、他の存在よりも弱いものとなりますから、それを避けるためには全ての悪事も神が創ったとしなければならないのです。

 二元論はその点で、多神教同様に矛盾から回避できます。悪事は悪の神の仕業だとすることができますから。



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2015年07月23日

アケメネス朝ペルシア ゾロアスター教2 善と悪の戦い

 ゾロアスター教においては、この善の神がアフラ・マズダー、悪の神がアンラ・マンユ(またはアーリマン)で、鋭く対立します。但し、アンラ・マンユと直接相対するのは、アフラ・マズダーではなくスプンタ・マンユとされますが、中世以降はスプンタ・マンユがアフラ・マズダーと同一視されるため、ややこしくなります。

 アフラ・マズダーの「アフラ」の部分は、インドのアスラ、私たちの知る言葉では阿修羅に由来します。インド神話では悪とされる阿修羅が、ゾロアスター教では善の神とは面白いですね。

 ゾロアスター教では、時間の流れは4つの期間に分けることができるとされています。それぞれの期間は3000年で、霊の創造が行われる第1期、物質の創造が第2期で、この頃はまだアンラ・マンユは地上への侵入が果たせず、善の世界でした。ユダヤ教やキリスト教におけるエデンを彷彿とさせますね。第3期は、アンラ・マンユが地上に侵入して幕を開けます。こうして善と悪の戦いが始まります。人間が生まれたのはこの時です。生物が死すべき定めを持つのは、善と悪が混じった世界になってしまったからとされます。最後の3000年が、ザラスシュトラの出現から善と悪の決戦を経て、善の最終的な勝利に続く最後の審判が行われるまでにあたります。最後の審判を受けるため、全ての死者は蘇るのです。

 こうした中にあって、人間は善を選ぶこともできるし、選ばないこともできます。善行を積んだ者は天国へ、積まなかった者は地獄へ落ちます。

 時間の流れを循環するものとして考えるインド的な考え方とはかなり異質ですよね。時間は直線的で、最後の審判というはっきりした終わりが存在します。こうした直線的な時間の流れ、善と悪の戦い、最後の審判といった概念、聞いたことがありますよね。そうです。ユダヤ教、キリスト教と同じです。成立年代から、ユダヤ教がゾロアスター教の影響を受けたものとされています。



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2015年07月24日

アケメネス朝ペルシア ゾロアスター教3 独特の風習、鳥葬

 世界最初の一神教は、前14世紀エジプトで第18王朝のアクエンアテンが太陽神アテンを唯一神として崇めたアマルナ革命ですが、それはアクエンアテン短い人生とともに消え失せ、後世への影響と言えば、せいぜい己やツタンカーメンの名前が多くの公式文書から消されたことくらいです。

 しかし、ゾロアスター教は違います。ユダヤ教に影響を与えたことで、キリスト教やイスラム教といった、ユダヤ教の系譜を引く宗教へと思想が受け継がれていくのです。他にも、紀元3世紀頃に成立したサーサーン朝ペルシアに生まれ、遥か東方まで広い地域で信仰されたマニ教はこのゾロアスター教やキリスト教グノーシス派から影響を受けています。

 ゾロアスター教は別名拝火教と言われることもあります通り、火を拝む風習を持ちます。火に悪を浄化するといった聖なる働きを見るのは、何もゾロアスター教に限ったことではありません。身近なところでは、正月に一年間使った縁起物を焼いて天に帰すどんど焼きもその1つです。炭の上を歩く火渡りも同様に宗教的な意味合いで使われることもあります。

 因みに、火渡りで火傷をしないのは、炭に触れたところの水分が瞬間的に蒸発して熱を奪ってくれるためです。瞑想やら何やらが原因ではありませんので、まかり間違って自己啓発セミナーなどに連れ込まれてしまって火渡りのデモンストレーションを見させられても、騙されないようご注意下さい。

 なぜ火を神聖なものとする宗教が数多ある中でゾロアスター教だけが拝火教と言われるのでしょうか。その答えは、アシャと言われる概念にあります。正義または天則と訳されるそうで、このアシャが火を支配しているとされます。火はアシャの具象化なのです。そして、アシャの概念がゾロアスター教の中核にあるため、ゾロアスター教と火の繋がりは極めて強いものとなるのです。

 また、ゾロアスター教は鳥葬といって、死体を猛禽類に食べさせることでも知られます。猛禽は、死体を食べるようにと神が創ったものとされますので、布施に当たるのです。もっとも、この方法は後に導入されたもので、成立当初からの風習とは異なるようです。

 聖典を『アヴェスター』と言います。原典訳が存在するようですので、興味をお持ちの方は読んでみても良いかもしれません。

 新興宗教の勃興期にはしばしば見られるように、ゾロアスター教もまた布教に困ったようですが、地方領主のウィーシュタースパの改宗を期に、広がりを見せました。更に大きな飛躍は、アケメネス朝ペルシアで信仰されるようになったことです。



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2015年07月25日

アケメネス朝ペルシア ミトラ教 インドからイギリスまで広い範囲で大流行

 ゾロアスター教に加えて、ミトラ教もまた中東生まれの宗教です。

 ミトラ教はインドからイギリスに至るまで広い範囲で信仰されました。ゾロアスター教においても大きな役割を果たしています。とりわけキリスト教化する以前のローマでは大流行でした。なぜローマで流行ったのかは分かっていません。ミトラ教は女性の入信を拒んでいたこともあり、やがてキリスト教にとって変わられます。ただ、キリスト教のお祭りの中にもミトラ教の影響は残っておりますので、それについては後にローマのキリスト教化について書く際に触れたいと思います。

 入信の際のイニシエーションには、水星、金星、火星、木星、月、太陽、土星の7つの天体と結びついた7つの段階があったそうです。この組み合わせは西洋で発達した占星術と同じですね。肉眼で見える惑星については網羅されていいます。これは昔の人々の観察力の鋭さを教えてくれるのと同時に、占いでは太陽系の本当の姿を知ることはできなかったという限界を示すものでもあります。

 ミトラ教では、人の魂は天から降りてきていたとされました。宗教の目的は、肉体は死によって滅んでも魂は天に帰れるようにするというものです。エジプトの死者の書のようなものだと思えばそう外れていないかもしれませんね。

 残念なことに、ミトラ教についてはほとんどのことが分かっていません。多くのレリーフが残されていますが、その絵に込められた本当の意味は、失われて久しいのです。歴史学がいつしか新たな発見をもたらすかもしれませんので、期待しましょう。



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2015年07月26日

アケメネス朝ペルシア 貨幣の誕生 王様の耳はロバの耳のミダス王は大富豪

 ペルシアに話を進める前にもう1つ、帝国が成立する前の話を紹介する必要がありますが、その前にギリシア神話にあるミダス王の話を書いておきましょう。

 ミダス王はトルコにあった都市の、紀元前8世紀の王がモデルになっています。ギリシア神話において、彼はディオニソスに気に入られて、何でも望みを叶えて貰えるようになります。ミダス王が望んだのは、触れたものを黄金にする能力でした。

 石ころを金にできるというのなら良かったのですが、触れたものは何でも金になってしまうのですから大変です。食べるものですら金に変わってしまうのですから、餓死してしまいますね。その能力を憎んだ王は、ディオニソスに願ってその能力を失わせてくれと頼みます。願いを聞き入れたディオニソスは川で身を清めよと指示し、王が従ったところ、川にその能力が移り、お陰で川は砂金が豊富になった、とされます。

 神話の背景になったのは、彼の国が豊富な金資源に恵まれていたという歴史的な事実です。ここにも自然界の不思議を説明しようという人間の願いが見て取れますね。

 余談ですが、このミダス王は「王様の耳はロバの耳」のモデルになった人物でもあります。

 大量に、それも比較的容易に入手できる金を背景に、紀元前550年頃、この地を支配していたリディア人の国で金貨が生まれます。クロイソス王が造らせたもので、動物を象ったものでした。小額の貨幣は、その動物の一部が用いられたそうです。

 国家が貨幣をコントロールするようになったことは、貴金属の秤量制が必然的に内包する問題を解決することにもなりました。秤量製では、金属の純度が問題になります。例えば、純度90%の金と80%の金を同じ重さだから同じ価値と扱うことはできませんよね。もし同じで良いなら、高純度の金に混ぜ物をして、純度80%まで落とすことで、資産を増やすことが可能となります。それでは取引の公平性が保てません。

 この地が交易で賑わっていたために客観的に価値を担保できるものが求められていたこと、そしてその希望を満たすだけの金が存在したことが大きかったのですね。



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