2017年12月23日

古代中国 創世神話1 体系的になっていない中国神話の特質 始原の神、盤古の誕生

 他の文明でまず神話から取り上げたのと同じように、中国でも神話について触れるところから始めようと思います。しかし、これがなかなか難しいのです。というのも、中国は神話的な世界の話は沢山あるのですが、神話を体系化しなかったからです。

 中国は漢民族が作ったと無邪気に言えるような状況であれば、また違ったことになった可能性もあります。しかし、中国は広い国土に幾つもの勢力があり、それらが統一された際に出自の異なる神話が同居することになった経緯があるでしょう。実際、『世界の神話伝説・総解説 (総解説シリーズ) - 』は、その理由を中国文明が多文化の融合によって生まれたからと指摘しています。更に、怪力乱神は語らないと主張した孔子の思想が国家指導原理となったために神話の統合がなされなかったと魯迅は指摘してます。

 そのため、複数の系統の神話が様々な本に断片的に描かれ、文献によって違いがあります。神話の本を複数読んでも神話要素を含む雑多な物語が詰め込まれているような印象を与えますし、神が神話の間で矛盾する性格や行動が見られます。

 ここで取り上げるのも、統一された神話のあらすじを紹介するといったレベルのものではなく、私が面白いと思ったものをピックアップするとお考え下さい。私が読んだのとは異なる本を読めば違う話が幾らでも出て来るでしょうし、同じ本を読んでもどこをピックアップするかで全く違うストーリーが出来上がるかもしれません。

 さて、神話によりますと、始めは何も存在せず、気がただ広がるばかりでした。神が光りあれと言ってその通りになるまでは何もなかったというユダヤ神話と似ていますね。

 その気はやがて盤古という巨人を生みだします。気の中に盤古のみが存在するという、自分が盤古だったらとても苦痛であろう時間が、なんと1万8000年も続きます。盤古は目が覚めて鶏卵の中のようなところに閉じ込められていることを悟ると、手斧(どこから取り出したのでしょうか?)を混沌に振り下ろします。殻が割れ、軽くて透き通った物が上に登って天となり、重くて濁ったものが下に沈んで大地となりました。巨人は1日に9度姿を変え、1丈ずつ大きくなっていき、天も地もそれに伴い厚みを1丈ずつ増していきました。

世界の神話伝説・総解説 (総解説シリーズ) -


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2017年12月24日

古代中国 創世神話2 盤古の遺体から様々なものが生まれる 太陽に住む3本足のカラスについての神話

 再び1万8000年が過ぎ、天地は今あるように大きく隔たりました。ただ、天と地は、この時点では各地に残る梯子でつながれていたそうです。天地を造る役割を果たしたためか、巨人盤古は息絶えます。しかし、ただ死んだだけではなく、その亡骸は様々なものに変わり、世界を満たしていきます。

 盤古の左の目は太陽、右の目は月となり、息は風と雲と化し、声は雷になりました。太陽と月は実際には全然サイズが違いますが、皆既日食や金環日食があることから地上から見るサイズはほぼ同一です。両目をそれに充てたのは昔の人々の観察力の素晴らしさかも知れません。ただ、太陽がこのタイミングで生まれたということは、少なくとも36,000年間世界は漆黒の闇に包まれていたということになります。盤古が生きた、暗くて天地すら存在しない前半生を思うと気の毒でなりません。

 更に、髪や髭は星に、体は山となり、流れ出た血は川となりました。毛は草や木に、汗は雨に、歯や骨は金属や石へと姿を変えます。別の系統の神話では、盤古の死体から頭が泰山になったことをはじめ5つの山が生まれたとされます。

 ただ、太陽には火烏(ひう)と呼ばれる3本足のカラス(3本足のニワトリとも言われる場合もあるそうです)がいると信じられていもいるそうですから、神話の合成が上手く言っていない感じですね。盤古の伝説がまとめられたのは三国時代とのことなので、昔の人びとがこのように考えていたかどうかは不明です。

 太陽にカラスが住むとされたのは、日の出とともに現れ、日の入りと共に去っていくカラスの習性が背景にあります。数ある神話の中には、太陽がカラスの背中に乗って空を旅するというものもあれば、カラスではなく6頭の龍が曵く車に乗っているというバージョンもあるとのことです。そういえば、ギリシア神話ではヘルメスが太陽を乗せた馬車を御していましたね。イメージが近いことに驚かされます。

 もう1つ興味深いことがあります。中国の遺跡から車が見られるようになるのは殷代からです。ということは、龍の曵く車に云々という神話は、夏以前には遡らないことは確実なのです。


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2017年12月25日

古代中国 創世神話3 女媧による人間作り 丁寧に作った人は出来が良く、手抜きした人は出来が悪いという神話

 さて、盤古によって天地は生まれたわけですが、まだ生命は誕生していません。人間を生み出したのはまた別の神話的存在です。ユダヤ教は一神教なので、両方共生み出したのは同一の神なのですが、中国の場合には人面蛇身の女神、女媧です。

 女媧は天地が別れた後に人間が居ないのを寂しく思い、黄土を水で練って人間を作り始めます。最初こそ丁寧に一人ひとりを生み出していった女媧でしたが、やがて飽きてしまいます。そこで、水でドロドロになった土の中に縄を入れ、縄から泥水を滴り落とすと、それが人間へと変わります。前者は出来が良く富者となり、後者は出来が悪く卑賤に留まった、ということです。

 『世界の神話伝説・総解説』は似たような話として、以下に見る北アメリカ先住民の神話が紹介されています。

神が土をこねて人間を造る時、太陽に当てすぎたのが黒い皮膚をした部族で、日陰に置いたのが白い肌の部族であるといい、一説では、神がはじめ不馴れのために粗末な人間ができあがり、あとになって作業に熟練して上等な人間ができあがったという。


 大陸を挟んでもなお、同じような話が有ることには人類の共通項を感じさせられてつくづく面白いと感じます。

 この女媧は、海の誕生に纏わる神話にも顔を出します。天地が分かれた際、天は落ちないように東西南北の隅を大きな柱で支えられていました。ある時、柱が折れてあらゆる天変地異が地上を襲います。柱を壊したままにはしておけません。女媧は巨大なカメの足を切断すると、その足で天を支え直しました。後に共工(この神の名は治水神話と絡んで出てきます)が帝王になろうとして顓頊と争います。敗北した共工は、帝王になれないなら死んだほうがマシと、山に頭を打ち付けました。すると、天を支えていた柱が折れ、地面が東南に傾いてしまったのです。こうして水が低地に集まり、海ができたのです。

 共工も女媧と同じく人面蛇身の神です。両者は同じ部族の神話だったか、片方がオリジナルでもう片方がオマージュ(あるいは剽窃)といった関係なのでしょう。

世界の神話伝説・総解説 (総解説シリーズ) -
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2017年12月26日

古代中国 創世神話4 洪水による人類のほぼ滅亡 ノアの箱舟に似た大洪水神話

 なお、造物主が天地が開かれた1/1にニワトリを、2日にイヌ、3日めにヒツジ、4日めにブタ、5日めにウシ、6日めにウマ、7日めに人を作ったとされる神話があり、そのために1/7を人日という祭日にしているそうです。ユダヤ教との関連を考えると面白いかもしれません。

 女媧に生み出された人類でしたが、やがてユダヤ教神話同様に堕落していき、神々の怒りを買います。こうしてメソポタミア神話に起源を持つ、ノアの方舟を彷彿とさせる出来事が起こるのです。

 中国神話で大洪水を起こすのは玉皇大帝という神で、善良な2人の兄妹を除いて全員溺死させてしまいます。

 神は2人に夫婦となって子を産めと言うのですが、2人は兄妹であることから断ります。そこで神は泥人形から人間を生み出すこととし、泥人形造りに2人の手を借ります。神と兄妹は100体の人形を作ります。ところが、人形を乾燥させている間に雨が降りはじめてしまいました。2人は急いで片付けようとしたのですが、急いでいたため幾つかを破損させてしまいます。

 翌日に神が人形に息を吹き込むと、人形が動き出し人間になりました。壊れた人形は障碍のある人間になったということです。

 この話、女媧が人類を作り上げた話と瓜二つですよね。より古い話に設定されている女媧が、より後世に作られたように思いますが、どうでしょうか。

 ここでは兄妹は結ばれなかったバージョンを紹介しましたが、洪水で生き残った兄妹こそ伏羲と女媧で、2人は夫婦となって人類の祖となったとの神話を苗族が残しています。

 ただ、伏羲も女媧の名前が記録されるのは戦国時代になってからのことです。洪水説話自体は古くからあったかもしれませんが、登場人(神?)物の名前は全然違ったのかもしれません。

 同工異曲の洪水説話は「中国西南部(湘西、貴州、広西、雲南、西康〔四川西部と西蔵(チベット)東部〕を含む)の諸少数民族中、ないしは東は台湾、西はヴェトナムおよびインド中部に及ぶ域外まで、すべて兄妹配偶型の洪水遺民、人類再創造の物語(以下洪水造人神話と略称)が流伝している」(『中国の神話伝説〈上〉 - 』)とのことで、中には兄妹で夫婦になったバージョンもあるそうです。

中国の神話伝説〈上〉 -
中国の神話伝説〈上〉 -

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2017年12月27日

古代中国 創世神話5 10の太陽が昇る神話 このままでは人類は滅亡してしまう! な、なんだってーーー!

 この後も、大地には色々な災厄が起こります。最悪の災厄の1つが、10の太陽が姿を表し、地上が干上がった話でしょう。

 神話によると、俊帝(漢代には語られなくなったため、詳細は良くわかっていません)の子が太陽で、その数なんと10もありました。あれ?太陽は盤古の目だったんじゃないの?と思われるかもしれませんが、今はその素晴らしい記憶力を封印しておいて下さい。太陽は俊帝の子なのです。

 10の太陽は地の果てに生えた木に止まり、毎日1個が昇り、9個は待機します。ところが、堯の代に太陽が10個昇るといった困った事態が起こります。地上はたちまち灼熱地獄と化しました。堯は弓の名手である羿に9個の太陽を射させます。太陽の中には3本足のカラスが住むとの神話を紹介しましたね。羿はこのカラスを見事に射止め、9つの太陽が死んで、地上は平和を取り戻します。

 太陽が10個あると考えられていたのは、十干と関係があります。太陽の名前が日甲、日乙、日丙、日丁、日戊、日己、日庚、日辛、日壬、日癸だったとされていることから明らかです。甲乙丙丁戊己庚辛壬癸は陽の名前だったのですね。日本が今も月を10日ごとに分け、上旬、中旬、下旬と読んでいるのはその名残だそうです。

 ちなみに、太陽が地下を通って再び上る神話はタイにもあるだけではなく、宮古島でも信じられていたそうです。隠れてしまった太陽を引き出す天岩戸のような神話は他国にもあり、通常は射日神話とセットとなっているそうですので、アジア圏の交易に伴い、神話も影響を与えあったことが分かって面白く感じます。

 十二支についてはメソポタミア起源であると考えられているそうです。十二支を日付に付すことは殷代には既に見られることが分かっています。ただ、年に使うようになったのは後漢時代からで、十二支に動物が配されるのも同じく後漢時代ということです。『甲骨文の話 (あじあブックス) - 』から引用します。

また、十二支に十二種の動物を配当することは、同じ後漢ごろより始まったらしい。ただし、十二支に各々の動物が何故割り当てられたのかは、今も不明である(因みに、虎はモンゴルでは豹、ウサギはベトナムでは猫、猪は中国・チベット・タイでは豚、になっている)

 ネコは寝ていて不参加だったというのは日本限定の神話なのですね。

甲骨文の話 (あじあブックス) -
甲骨文の話 (あじあブックス) -

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