2018年09月09日

春秋戦国 范雎の引退2 蔡沢は過去の悲惨な最期を遂げた人物を例に挙げ、引くべきときに引くことを進言する

 蔡沢は秦に向かうと、范雎を挑発するため「客人の蔡沢は弁舌巧みな知恵者で、一度秦王に見えれば応侯の地位も奪えるだろう」と吹聴します。当然、大言壮語は范雎の耳に入ります。范雎は不快に感じ、「私は太古からの学説をことごとく知っている。口数が多いだけの論者になど負けはしない。そのような輩が私の位を奪うことなどできるわけがない」と言うと蔡沢を呼び寄せました。

 ここまでは蔡沢の狙い通りです。首尾よく范雎と面会した蔡沢は范雎の説得をはじめました。

蔡沢「富貴で知らぬ者はなく、万民を治めて成功し、早逝することなく長生きし、その栄光は世界の終わりまで語り続けられる。それこそ素晴らしいと思いませんか」
范雎「その通りだ」
蔡沢「では、秦の商鞅、楚の呉起、越の文種はどうでしょう。その行末をどう思いますか」
范雎「彼らのどこが悪いのか。商鞅は刑罰を定めて賞罰を明らかにして国は治まった。呉起は君主の顔色を窺うようなことはせず、讒言を実績ではねのけた。文種は主君が危機に陥っても能力を尽くして失地を回復させ、功を挙げても富貴を得ても驕らなかった。彼らこそ忠臣で、士たるもの身を殺して名を為すこともあろう」
蔡沢「誠実で有能な臣下でも主君に恵まれなければ何も得ずに身は滅ぼされます。比干は忠義の士でも殷は滅び、伍子胥は知恵者でしたが呉は滅び、晋の申生は孝行息子でしたが晋は驪姫の乱で乱れました。商鞅、呉起、文種は功こそ誰もが認めますが、徳があったとは言われません。考えるに、身も名も共に完全に保つことこそ最善、名は讃えられても身を滅ぼされるのはこれに次ぎ、名を辱められて身を保つは下です」

 仰る通りですね。生きて栄誉を保つことが大切であるとした上で、蔡沢は言葉を続けます。

蔡沢「さて、あなたは商鞅、呉起、文種と比べて有能でしょうか」
范雎「私は彼らには及ばない」
蔡沢「では昭襄王は、情け深く情が厚く、有能な士とは親交を結んだ秦の孝公、楚の悼王、越王句践と比べてどちらが部下を大切にするでしょう」
范雎「分からない」
蔡沢「古の主君たちと比べて特に優れているわけではない昭襄王に、古の名臣たちに敵わないあなたが仕えています。それなのに、あなたの位は先人を遥かに越えています。栄華が高い分、そこから落ちる際には彼らよりも酷い未来が待っているでしょう。易の乾卦に「亢竜悔いあり」(登りつめた竜は後悔する)とある通り、栄華を極めた者はあとは墜ちるしかありません。范蠡はそれを知っていたから生を全うしました。この後、どう過ごすのが最適か、よくお考えください」


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posted by 仲井 智史 at 12:00| Comment(0) | 春秋戦国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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