2016年02月16日

アレクサンドロス大王 フィロタス粛清2 パルメニオンの排除とヒンズークシへの進軍

 当時フィロタスの父パルメニオンはエクバタナにあって、補給・連絡といった後方勤務に従事していました。事ここに至れば後方に留まるパルメニオンも生かしておくわけにはいきません。息子の死を知ったパルメニオンに反乱を起こされれば、後方との接続が失われてしまいます。

 アレクサンドロス3世はパルメニオン宛ての手紙、エクバタナ方面の司令官への指示書に加えてフィロタスから父パルメニオンへ宛てた手紙を偽造してポリュダマスに持たせ、エクバタナへ派遣します。ポリュダマスは通常なら30日間掛かる道のりを、砂漠を通ることで僅か11日で踏破、パルメニオンをハマダンの庭園で刺殺しました。

 パルメニオンは歴戦の勇士で優れた将軍ですから、殺害を知った兵士が暴動を起こしかけます。しかし、それもアレクサンドロスからの指令書を見て静まりました。

 アレクサンドロス3世が弱冠20歳で即位したとき、脆弱だった権力基盤を固める役に立ったのは、いずれも優れた将軍であるアンティパトロスとこのパルメニオンの支持があったことでした。それがフィロタスを粛清できるようになったことは、アレクサンドロス3世がパルメニオンの力を必要としなくなったことを示したことにもなります。

 フィロタス殺害後、騎兵隊の指揮権は2分割され、アレクサンドロス3世の無二の親友ヘファイスティオンとクレイトスがその地位を得ます。ヘファイスティオンはそれまで軍事的な功績はありませんから、露骨な仲間贔屓です。一方、クレイトスは有能な指揮官であることを既に証明しており、兵士も納得する人事です。グラニコス川の戦いでアレクサンドロス3世に迫る敵兵を切って捨てたのがこのクレイトスでしたね。このクレイトスはアレクサンドロスの東方協調路線には批判的で、後に悲劇的な死を迎えることになります。

 フィロタスに連座して、7人しか居ない側近護衛官のうちデメトリオスが処刑され、後任にプトレマイオスが任じられます。こうして7人の護衛官の内、ヘファイスティオン、ペルディッカス、レオンナトス、そしてプトレマイオスとアレクサンドロス3世の学友から4人が選ばれていることになります。いよいよあらゆることをアレクサンドロスが思うままに進められる体制が整っていくことになりました。

 ベッソス追討は続きます。

 ベッソスはアレクサンドロス3世によってアレイアの総督に任命されたサティバルザネスを反乱に引きこむことに成功、サティバルザネスは後方で蜂起してアレクサンドロスを引き返させます。反乱は鎮圧され、アレクサンドロス3世はベッソスを追います。ベッソスは焦土作戦に出るのですが、資金難は遠い昔となったマケドニア軍を引き返させることは出来ません。

 マケドニア軍はヘルマンド川に沿って進み、アラコシアのアレクサンドリア(後のカンダハル)を築いて更に北上、カブールに入ります。カブールの北のべグラーム付近で、ヒンズークシ山脈をどのように越えるかが問題となります。

 ヒンズークシ山脈は6,000メートル級の山々が聳え立つ難所で、現地語でパンジシル峡谷、ギリシア人にはコーカサスと呼ばれます。ギリシア神話で人間の見方をしてゼウスの嫌気に触れてしまったプロメテウスが縛り付けられていたところですね。ヒンズークシ山脈を抜けるルートとしては、サラング峠、西方のバーミヤン経由、東側のハワク峠の3つのルートが知られていました。しかし、前者2つはベッソスが補給地点を破壊していたために、現実的ではありません。残った東側のハワク峠を越えるしかありませんでした。


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posted by 仲井 智史 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | アレクサンドロス大王 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヒンズークシとコーカサスは別物ですよー
Posted by 通りすがり at 2017年10月10日 22:59
確かに、ヒンズークシ山脈とコーカサス山脈は別物ですね、ご指摘ありがとうございます!
ただ、現在のアフガニスタンに当たるこの地にコーカサスのアレクサンドリア(現在のバグラーム)が建設されたことは事実です。
ギリシア人はどうやらヒンズークシ山脈もコーカサスと呼んでいたようです。

上記を勘案するに、現在の知識ではヒンズークシとコーカサスは全く別物であり、それを誤解させる書き方をしたのは私の至らないところではありますね。もう少し、分かりやすい表現ができるようにしようと思いました。

また何かおかしな点がありましたら、ご指摘頂けるとうれしゅうございます。
Posted by 仲井 智史 at 2017年10月14日 02:06
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