2016年01月05日

古代ギリシアの科学哲学 アリストテレス5 重いものほど速く落ちるとした物理学と自然発生説

 2つの鉄球があるとします。2つの球は同じ重さで、それぞれから1本の紐が出ています。紐同士を結わえた状態で2つの球を落とした時と、紐を結わえずに球を落とした場合、紐を結わえたという事実だけで落ちる速度が倍になるものでしょうか。あるいは、塔の上から球を落とすとします。塔の途中には刀が飛び出ていて、そこで紐を切断するとします。紐が切断された瞬間に球は落下速度を緩めるでしょうか。

 落下速度が質量に比例するという考えは、この通り、少しまじめに考えただけで破綻してしまうのです。

 勿論、思考実験だけではなく、実験を行ってさえいればより完璧だったでしょう。

 特に時間を割いたと見られるが生物学です。500種類を超える生物の記録を残したことに見られるように、多くの時間を割いたことが伺われます。解剖も研究の手段に用いていましたが、心臓が感覚の中心であるといった誤った主張も少なくありません。生物学についての最も有名な彼の誤りは、原始的な生物は親から生まれることもあるが、泥や他の生き物の死体から自然と生まれていくるという自然発生説を唱えたことでしょう。

 水を汲んで放置しておきますと、大量の微生物が蠢きだしますから、自然発生説も無理からぬ考えだとは思います。生命の種子の片割れたる精子(卵子は体内のため見えませんのでここでは精子のみ取り上げます)も顕微鏡でなければ見えないサイズですし。

 師の興味の広さを知るアレクサンドロス3世は、遠征先からギリシアでは見られない生物や物をアリストテレスへ送りますが、研究はされなかったようです。体系的な研究には向かない題材だったためか、はたまた遠征に同行した甥のカリステネスがアレクサンドロス3世の手で処刑された(後にアレクサンドロス3世のところで触れます)ために関係が悪化したためか、理由は不明です。

 アジアへの蔑視を隠さないアリストテレスは、自分とは逆にアジアの専制君主的な振る舞いに傾倒していくアレクサンドロス3世に対し、そのような支配は誰も望まないと、批判しています。こうしたことも影響したかもしれません。

 インド産の珍種はさておいて、鶏の発生については同日に生まれた卵を毎日1つずつ割って中身を確認することで、雛の成長する模様を記録しています。最初に形ができたのが心臓だったことから、上記の心臓中心説となったのでしょう。

 少なからぬ欠点はありますが、力学を創設し、多くの生物の生態について記録し、天文学や医学にも一方ならぬ興味を示したことを考えますと、アリストテレスの功績は欠点を遥かに凌駕していると思います。彼がもし現代に生きていたら、驚く程に広がった知の地平を、更に広げる偉大な人物になったのではないでしょうか。


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posted by 仲井 智史 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 古代ギリシアの科学哲学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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