2017年12月01日

ローマ3 フン族7 フン族はメスやランスを破壊して西進するが、オルレアン攻囲中に外から囲まれる

 451年、フン族はメスを蹂躙し、ランスを破壊して西へ向かいます。パリでは動揺する市民に聖ジェノフェーバが抗戦を説いて回りました。逃げようとする女性にも、味方に食事を提供したり自ら武器を取って戦おうと説き、パリは神の加護によって守られていると諭したのです。神の加護があったからか、あるいはもっと現実的に、当時はシテ島にあったパリが難攻不落だったためか、フン族はパリを落とすことはできませんでした。

 パリはフン族にとって最終的な目的地ではありません。攻撃を切り上げるとオルレアンへと向かいます。オルレアンは攻囲されました。破城槌が城門に打ち付けられます。城門が開いてしまえば、待つのは破壊と略奪と死ですから、防御側は必死に抗戦を続けました。それでも、衆を頼んでの攻撃に防御側は押され、陥落は目前に迫ります。

 ところが、この時に劇的な逆転劇が起こります。

 『ロード・オブ・ザ・リング』の2巻『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』をご存じの方はのクライマックスのシーンを思い返してください。あらゆる良きものを破壊しようとするオークの軍勢が人とエルフが立て篭もる要塞を攻略し、人もエルフも皆殺しにしようとする正にその瞬間、明け方の陽の光と共に白の魔法使いガンダルフが騎兵隊を率いて戻ってきたシーンを。格好良いので、まだ見ていない方は是非ご覧になってください。

 「彼らは年老いた僧正の指示に従って、三度目に城壁から田園の方角を見た。すると、はるか遠方に、一群の雲が大地から上昇するありさまが目に入った。これを僧正に報告すると、彼は、『これこそ神の助けだ』と語った。
 だがそのうち都市の城壁は破城槌によって揺さぶられ、まさに崩壊しようとした。すると見よ、アエティウスと西ゴート王テオドリックとその息子トリスムンドが、軍勢を引き連れて市の門前に現れたではないか。彼らは敵軍を破り、撃退した。このように神が聖なる僧正を用いられたことによって都市が解放された時、かのアッチラは逃走した。アッチラはマウリアクス平原に退き、ここで戦いの準備をした。これを予知した西ローマ軍と西ゴート軍は、ありとあらゆる兵力を用意してアッチラに対抗した」
古代史の終焉を飾った英雄―フン族・アッチラ王の真実

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2017年12月02日

ローマ3 フン族8 フン族はトロワで態勢を整え、再びローマ軍と対峙する

 トゥールの司教グレゴールなる人物がこれを記録しているそうです。こうしてオルレアンは生き残り、後の時代にジャンヌ・ダルクを生むことになります。

 上掲書は全体的に悪文が目立つように思います。とりわけ、「僧正」はヨーロッパの雰囲気が感じられなくなるので止めて欲しいのが正直なところです。袈裟を着た坊主が寺の本堂にいるようなイメージが沸いてしまうのです。司祭とか教父とか何とか、もっと訳し方があると思うのです。勝手な言い分でした。

 アエティウスがかつてフン族の宮廷に人質として滞在していたことは以前書きましたね。彼が滞在したのは王室で、彼の友人の中には王の甥だったアッティラもいて、そこで騎射や戦術を習ったと伝えられます。幼い頃からフン族のことをよく知っていた人物ですから、救援に赴くのに、彼ほど適した人材はいなかったように思われます。

 オルレアンの戦いは西ローマ側の勝利とフン族の退却で幕を下ろしましたが、フン族はまだ致命的なダメージを被ったわけではありませんでした。起死回生の策として、アッティラは戦場でアエティウスを打倒してしまうことを狙います。なにせ、西ローマと西ゴート族他諸族をまとめた立役者は彼なのです。アエティウスさえ斃すことに成功すれば、西ローマ・西ゴート連合軍は自然と解体し、愚かなローマ皇帝などたちどころに蹂躙できるに違いないのです。

 アッティラが退却せずに居座ってしまえば、西ローマには座視することなど許されません。こうして両軍は再び干戈を交えることになるのです。後の世に言うカタラウニア(またはカタラウヌム)の戦いです。

 フン族側は、マウリアクにフン族が、トロワにゲピート族とリプアリ・フランク族が布陣します。対する西ローマ側は、サリー・フランク族とブルグント族がトロワへ、西ローマと西ゴート族がマウリアクへ向かいました。

 フランク族はトロワで仲間を相手に戦うことになったのですね。

 トロワでの戦いは激しいものでした。フランク族同士の戦いの最中、リプアリ・フランク族のリーダーが戦死したほどです。このことから、戦後はフランク族をサリー・フランク族のリーダーであるメロヴィクが束ねることになっていきます。


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ラベル:ローマ フン族
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2017年12月03日

ローマ3 フン族9 乱戦の中で西ゴート王が戦死、敵討ちに燃えるゴート族はローマとともにフン族を猛攻する

 同じ頃、マウリアクでもゲルマン人同士で激しい戦いが行われていました。彼らには自分たちが同族であるという意識などありませんし、国民国家的な意識も当然ありません。リーダーに戦えと命じられれば戦うのです。

 緒戦ではローマとフン族は戦力の大部分を保ったまま、ゲルマン族の争いの様相を呈していました。状況が変わるのは、丘になっていたシャンパーニュを巡る戦いです。

 高所に陣取ることは、山を下る勢いを打撃力に上乗せできるため、圧倒的に有利です。近代戦でも状況は同じで、だからこそ日露戦争における203高地の戦いのように敵味方が多大な犠牲を払ってでも奪い合うのです。

 シャンパーニュには西ローマ側が陣取り、平地に下りません。平地で対等に戦えば勝ち目がないと踏んだためかもしれません。フン族は猛攻を加えて奪還を図ります。こうして全線に渡って激しい戦いが行われているその渦中、西ゴート族の王テオドリックが落馬したところを馬蹄に踏みにじられて死亡します。西ゴート族は王の仇討ちにフン族を激しく攻撃、アッティラを後退させました。

 アッティラは堡塁に篭り、そこを西ローマ軍が囲みました。戦いに敗れた際に生きたまま捕えられるような失態を犯さないよう、アッティラは堡塁の中央に直径4メートルの穴が掘らせ、そこに火葬用の薪を積み上げさせます。

 遥か後、偶然にもアッティラのこの堡塁跡が発見されています。そこには多くの遺骨と共に、アッティラが薪を積み上げさせた穴も見つかっています。遺骨の分析から、フン族の死者の多くは25歳以下と見られているそうです。

 フン族を追い詰めつつあったアエティウスでしたが、彼はフン族の殲滅は考えませんでした。多くのゲルマン族が跋扈する中、フン族と同盟を結ぶことができれば西ローマの力は増すことになるのです。

 とは言え、同盟軍相手に素直にそう言うわけにも行かないでしょう。特に、西ゴート族にとってアッティラは王の仇です。そこで一計を案じたアエティウスは、父の復讐を考える西ゴート族の王子トリスモンドに、故郷に帰って王権を確立させることが先決ではないかと説いて帰国させることに成功します。遠征に出ている間に本国をライバルに押さえられてしまえば台無しですからね。トリスモンドはアエティウスに感謝しつつ帰国しました。


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2017年12月04日

ローマ3 フン族10 フン族は敗退、功績を上げたフランク族のクローヴィスがフランク王国の基礎を作ることになる

 包囲の緩んだことを知ったフン族はパンノニアに撤退しました。

図説 蛮族の歴史 ~世界史を変えた侵略者たち』は、アエティウスの働きに対してこう賛辞を述べています。

 アエティウスは有利な立場を最大限に利用しなかったが、カタラウヌムの戦いはローマ人の圧倒的勝利だった。ローマ人は、ロシアから大西洋におよぶアッティラの帝国建設の計画をくじき、撤退を余儀なくさせ、フン族に深刻な人的損害を与えた。歴史の大きな枠組みにおいて、アエティウスとローマ軍は、こうして西ヨーロッパと西洋文明をフン族の手による完全な破壊から救ったことになる。


 一連の戦闘は激烈で、戦闘に参加した4人に1人が戦死したとも伝えられる程です。ヨルダネスは使者165,000としているそうですが、流石に大げさでしょう。実際は3万程度との推測もあるそうですので、そのあたりが妥当でしょうか。現代戦では10%が損耗(戦死傷病全て込みで)すると、その部隊は戦力にならなくなるとされています。10%の死者を出したと仮定すると、戦い前の両軍の合計は30万となりますね。古代にしては少々軍の規模が大きすぎるとは思いますが。

 戦後、ブルグント族はアエティウスからソーヌ川とローヌ川の谷に住んで良いことを保障されます。

 フランク族は先述の通りクローヴィスが王となります。彼は先見の明のある指導者で、カトリックの女性クロティルドと結婚することで自身はキリスト教を信じないままキリスト教を取り込むことに成功します。

 ゲルマン諸族の一部はゴート族のようにキリスト教化していましたが、フランク族はまだ先祖由来の多神教を信仰していました。因みに、彼らの土着信仰は北欧神話と同じくオーディンを主神とするものです。遥か遠い未来、バイキングについて触れる際に北欧神話として書く予定ですので、気長にお待ち下さい。

 クローヴィスは486年にローマのシヤグリウスを破る他、異民族相手であろうと同族相手であろうとあらゆる手段を駆使して領土を広げます。こうして彼は一代にしてメロヴィング朝を興することに成功するのです。その威名の大きさは、東クローヴィスの死の直前にローマ皇帝のアナスタシオスが彼に執政官の称号を授けたことからも見て取れます。フランク族の弱点は、父の遺産を息子たちが分割して受け取ることでした。放っておけば国の弱体化は避けられない体制なのです。これが災いし、フランク王国はやがて弱体化して他の家系に奪われることになるのですが、それはまた後の話に取っておくことにします。

図説 蛮族の歴史 ~世界史を変えた侵略者たち -
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2017年12月05日

ローマ3 フン族11 フン族は撤退するが帰途も略奪を働き、アクィレイアを追い出された人々はベネツィアを建設する

 西ゴート族は、今はまだローマの同盟国に留まります。しかし、ローマが更に弱体化し、遂には滅びる5世紀末には「西ゴート族は勢力をあらゆる方向へ拡張して、より広い領域を征服するかゆすり取った。その範囲はピレネー山脈までのガリア南西部全域、二つの大都市アルルとマルセイユを含むプロヴァンス地方、クレルモンとオーヴェルニュ、そしてイベリア半島のほぼ全域に及んだ。」(『ローマ帝国の崩壊: 文明が終わるということ - 』)というように支配地域を大きく広げることになりました。

 異民族の占領地域ではローマ風の行政組織が維持されました。行政や事務に携わっていた者はそのまま各地に興った王国の行政官となっていきます。これらに加え、王国が各地に成立したことは地方の人々にとっては出世の機会が広がることも意味していました。もっとも、初期の破壊を生き延びた者にしか意味がないことでしょうけど。

 勿論、ローマの行政官がそのまま同じような業務を続けられたのは、新たな支配者が彼らの技能を役に立つものと判断したから利用したということに過ぎず、ローマが示したような平等は見られませんでした。例えば裁判や軍は異民族が握っていたのです。ただ、行政官をローマの人々が占めたことは異民族の国々の使う言語がローマ化していくことに繋がります。

 撤退したフン族は、行き掛けの駄賃とばかりにパドヴァやヴェローナといった都市を破壊し、ミラノを攻め落とします。ミラノは破壊されこそ免れましたが、被害は甚大でした。また、アドリア海に突き出た岬の先端にあるベネツィア人の都市アクィレイア攻撃します。長い包囲戦の末、攻城兵器まで繰り出しての攻撃に遂にアクィレイアは陥落、市民の多くは海上に逃げます。逃げ出した人々によって建設されたのがベネツィアと伝えられます。もっとも、島々には集落は既にありましたから、ゼロから作られたと考えるのは誤りのようです。

 北イタリアを席巻したフン族の次の狙いはローマだと誰もが思いました。

ローマ帝国の崩壊: 文明が終わるということ -
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