2016年05月01日

アレキサンドリア図書館 今も昔も悪書が大半を占めた? 図書館の歴史とその実情

 最後に、色々と調べる中で『図書館の興亡』にこのような面白い文章があったので記録しておきましょう。

図書館の概要がわかると、結論はたちまち明らかになる。つまり、書物の大半は悪書であり、しかも実際にとんでもない悪書だということだ。さらに悪いのは、それが常態(ノーマル)であることだ。それらの書物はその時代の矛盾や混迷の域を出ていない(その点では本書も例外ではないと確信する)。


 この文章は現代の図書館について書かれたものですが、正直に言って、アレクサンドリアの大図書館も同じように下らない本は沢山あったでしょう。しかし、質で判断して図書館に入れるかどうかを考え始めると、これも大変なことになるのは間違いありません。そもそも、誰がその質を評定するのかも問題になります。

 例えばですが、天動説華やかなりし時代にあっては、地動説など無知蒙昧の輩の妄言として片付けられて、その書も保管されなかったに違いありません。

 ですから、質は兎も角として、量の確保は大切なのですね。

 しかし、利用者としては下らない本が山積する中からお目当ての本を探さなければならなくなるので、それも難しい問題です。

 上述の本は中国に関しては随分と怪しいことを書いています。例えば始皇帝をエイ政ではなく、趙政と書いてしまったり、雲夢県の睡虎地と呼ばれる場所から秦代に下級官吏だった喜という人物の墓から仕事で使っていたのであろう法律文書が出土した(これを雲夢睡虎地秦簡と呼びます)ものを学者のものとしています。あるいは始皇帝の死を農民反乱討伐の帰路としているのですが、実際は巡遊の帰りでした。

 なので、少々眉唾くらいで読むのが正しいと思いますが、図書館のあり方について考える糧にはなると思います。

 さあ、ヘレニズム、図書館を眺めましたので、いよいろローマ時代へ進むことにしましょう。


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ラベル:図書館
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2016年05月02日

ブックガイド31 アレキサンドリア図書館の栄光1

知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語 -
知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語 -

 アレクサンドリアの図書館の設立から滅亡までを、集った天才たちが成し遂げたことと共に簡潔にまとめているのがこちらの本です。エラトステネスやエウクレイデス、アリスタルコスといった名前は馴染みがないかもしれませんが、彼らの活躍は胸が踊るものです。

 ただ、アレクサンドリア図書館の存続はプトレマイオス朝より更に長いわけですから、それを一冊に纏めることは分量がとても足りないのも事実です。興味が湧いた方は他の科学史の本に当たると良いと思います。


アレクサンドリア図書館の謎―古代の知の宝庫を読み解く -
アレクサンドリア図書館の謎―古代の知の宝庫を読み解く -

 アレクサンドリア図書館は遺構すら見つかっていませんから、どのようなものだったのかも全て伝説から読み取るしかありません。それでも、伝説の中から著者はアレクサンドリア図書館が単一の建物ではなかったということを、先行する研究を含めて紹介してくれています。

 最初に図書館が独立した建物ではなかったと聞いた時には懐疑的だったのに、圧倒的な証拠を前に考えを変えていきます。私も今ではこの結論を受入ざるをえないと思うようになりました。

 図書館で過ごした天才たちではなく、図書館そのものに焦点を当てていますので、科学史より歴史に興味をお持ちの方に向いているかもしれません。


図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで -
図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで -

 アレクサンドリア図書館は最初の図書館でもなければ最後の図書館でもなく、まして最大の図書館でもありません。しかし、歴史的に見れば、知の世界を切り開く大きな一歩だったのは間違いありません。

 伝説のアレクサンドリア図書館の時代から現代まで、図書館は何を担い、どう変化してきのでしょうか。その一端を垣間見ることができます。下らない本が多い等と(多くの人が思っているであろう)諧謔を交えながら、図書館の変革の歴史がありますので、現代における図書館の意義を考えるのにも役に立つでしょう。


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2016年05月03日

ブックガイド32 アレキサンドリア図書館の栄光2

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫) -
アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫) -

 古代ギリシアに30以上の歯車が組み合わされた複雑な機械があったと言われても、少し前までなら誰も信じなかったでしょう。技術の発展には、たった1人の天才がいるだけでは駄目です。1人の一生を遥かに越えた長期に渡る知識と経験、知識が凝縮された形としての治工具が必要です。誰も誇大に精密機械があったとは思わなかったのも当然です。

 こうした認識を覆す、画期的な発見となったアンティキティラ島の機械について、発見から解明の過程を克明に記しているのがこちらです。この奮闘の物語自体も面白いのですが、対象となる機械そのものも技術的な面に加えて機械が実現しようとした科学的な知見という点からも実に興味深いものです。

 古代の天文学や技術がどれほど優れていたか、その事実に圧倒されます。


図解 古代・中世の超技術38―「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで (ブルーバックス) -
図解 古代・中世の超技術38―「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで (ブルーバックス) -

 サブタイトルにありますように、古代でも限られた道具と技術を使った自動ドアや聖水自動販売機といった機械細工が作られていました。こちらの本では38の古代の技術を紹介してくれています。

 本作中で「図面は真実を語るということを信条としている」と語る通り、各々には(著者の想像も交えて)簡略図が記されていますので、私達にも動作の原理が分かるようになっています。

 それにしても、古代の人々は限られた情報の中からよくぞこうした技術を編み出したものです。普遍的な価値を持つ、科学や技術の強みを教えてくれる一冊です。


宇宙創成〈上〉 (新潮文庫) -
宇宙創成〈上〉 (新潮文庫) -

 数学分野のテーマをドラマティックな人間ドラマに絡めて描き出す、サイモン・シンがビッグバン宇宙論がどのように生まれ育ったか、天文学史を追いながら解説してくれているのがこちら。

 ビッグバン宇宙論についてはある程度知ったつもりではありましたが、こちらは読み物としても大変に面白く、一気に読み尽くしてしまいました。

 今回ご紹介していますのは、月や太陽までの距離や大きさを地上にいながら知る方法が紹介されているためです。古代ギリシア人の力に驚くと同時に、現代の知の世界の広がりを感じさせてくれる素晴らしい本ですので、宇宙論に興味が有る方はぜひ手にとって見てください。


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2016年05月04日

ローマ プレ建国神話1 トロイ戦争から逃れたアイネイアス、イタリアへ逃げてローマ人の先祖となる

 ローマ帝国の建国物語については、紀元元年前後に活躍した歴史家リウィウスが、その史実性には疑問を投げかけながらも伝説として記しています。その伝説によると、ローマを建てたのはロムルスとレムスという双子の兄弟ということになっていますが、ここではもう少々歴史を遡りましょう。

 トロイ戦争でトロイア側に立って戦い、ヘクトルに次ぐ勇士と謳われたアイネイアスは、プリアモスの娘クレウサを娶り、息子アスカニオスを得ていました。トロイア落城の際、アイネイアスは父と息子と共に燃え盛る城から脱出します。敬虔なアイネイアスは陥落の際に守護神の像を守り、父を背負って脱出したことで、アカイア側に感心され、助かったそうです。

 アイネイアスはイタリアを目指す途中で紆余曲折を経てカルタゴに立ち寄り、その地でディドと親しくなります。このディドはカルタゴを建設したとされる女性です。フェニキアの項で見た通り、先住民からウシの皮1枚分の土地を与えると言われ、細かく割いたウシの皮で広い土地を囲って裏をかいた利発な女性でしたね。容姿は分かりませんが、利発な女王に愛されたならカルタゴに留まる決意をしても良さそうです。しかし、アイネイアスはゼウスからイタリアへ渡るよう促され、遂にディドを置いて旅立ちます。ディドは自殺してしまいました。この時、ディドはローマとカルタゴには常に憎しみと戦いがあるように、と呪いをかけたそうです。勿論、これはポエニ戦争で両国が激しく戦ったことの歴史的背景を語るものであったでしょう。

 イタリアでは巫女の力を借りて亡き父(トロイアからの逃避行中、カルタゴに渡る前にクレタ島で死去していました)の霊と会い、子孫がイタリアの英雄になると告げられます。

 更にイタリアを北上し、イタリア中西部のラティウムに辿り着いたアイネイアスは、この地の王ラティヌスの娘ラウィニアと婚約します。モテモテですね。

 ところが、ラウィニアは既にアルデアの王トゥルヌスと婚約していたものですから、トゥルヌスは烈火のごとくに怒ります。こうしてトゥルヌスたちとアイネイアスらトロイア勢との間に戦いが勃発します。一騎討ちの末にトゥルヌスを討ち取ったアイネイアスは無事にラウィニアと結婚し、新たな都市ラウィニウムを築いたとされます。

 アイネイアスの子アスカニオスはアルバ・ロンガという都市を築き、王となります。このアスカニオスから12代後に当たる、第13代目の王プロカには2人の息子が居ました。兄のヌミトルと弟のアムリウスです(但し、兄弟の順序には異説があります)。プロカはヌミトルを王にしたいと願いましたが、王位についたのは弟のアムリウスでした。

 アムリウスは兄ヌミトルの子が狩りにでかけた際に待ち伏せて殺害し、強盗の仕業に見せかけてしっかりと後顧の憂いを絶ちます。


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2016年05月05日

ローマ プレ建国神話2 アイネイアス伝説を語り継いだエトルリア人とローマの先祖の物語

 ヌミトルには娘のレア・シルウィアが残されました。アムリウスは姪を殺しはしませんでしたが、炉の神ウェスタの神殿の巫女として隔離しました。ウェスタはギリシア神話における処女神ヘスティアに相当する神で、巫女は妊娠が禁じられていました。

 ところが、軍神マルスが彼女と交わり、子を宿してしまいます。レア・シルウィアの懐妊はアムリウスの知るところとなり、アムリウスは姪に監視を付けます。そして、レア・シルウィアは双子の男児を出産しました。

 その双子こそ、ロムルスとレムスです。

 ただ、年代を計算しますと、トロイ落城からロムルスとレムス誕生までは2世代程度しか無いとのことです。双子の母レア・シルウィアは、イリアとも呼ばれています。トロイ戦争を謳ったホメロスの著作が『イリアス』だったことを思い出して下さい。イリアの名前はトロイアと深く結びついて居ます。イリアの名前と年代計算から、実はアイネイアスの娘がイリアで、その息子がロムルスとレムスである可能性が浮上します。

 双子の祖父が兄弟間で激しい闘いを演じるのにはギリシア悲劇と共通する要素があります。トロイの英雄アガメムノンの一家が血で血を洗う争いを長く続けたことに見られるように。

 ローマ建設が本当にトロイア戦争を生き延びた人物によるものなのかどうかは疑わしいでしょう。しかし、トロイア系の名前が出てくること、ギリシア悲劇そのもののような骨肉の争いが見られることを考えますと、建国神話にはギリシア文化(トロイアの影響を考えるとエーゲ海文明と呼ぶほうが適切かもしれませんが)の影響があるのは事実だと思います。

 もう1つ興味深いのは、当時のローマ付近にロミリウスというエトルリア系の氏族がいたとされることです。同じく、エトルリア系氏族にルマがありました。こちらにはローマの語源になった、という説があるそうです。更にレムスはギリシアでローマの建国者とされたロモスをローマ人がこれまたエトルリア起源とされる氏族レムミウスに結びつけたとも言われます。

 興味深いのは、アイネイアスの神話を語り継いでいたのがエトルリア人であることでしょう。エトルリア人は非印欧語族だったこともあり、文化の全容は分かっていませんが、トロイア戦争の敗者であるところのアイネイアスを建国の祖に据えていることは彼らの死生観を表しているのかもしれません。それにしても、どうしてギリシアの神話的伝説のトロイア戦争からの伝承をエトルリア人が引き継いだのか、興味がそそられてなりません。トロイアから生き延びた者が海路ギリシアを通過してイタリアへ向かったのかと思うと、アイネイアス伝説はある程度の歴史的事実を反映していると思えないこともないですね。


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