2015年11月01日

科学なニュース31 「ロッシェル塩」初公開へ">ワインから軍需物資…「ロッシェル塩」初公開へ

 10月31日から上野の科学博物館で開催されている「ワイン展 ―ぶどうから生まれた奇跡―」の展示品について、主催者の1社である読売新聞がワインから軍需物資…「ロッシェル塩」初公開へというニュースを報じました。

 ロッシェル塩なる聞き慣れない名前に興味を惹かれて少しだけ調べてみたところ、ロッシェル塩とは酒石酸カリウムナトリウムのことと分かりました。ロッシェルとはこの塩を発見した学者の名前との由です。なるほど、酒石酸であれば、ブドウに多く含まれますから頷けるニュースになります。

 酒石酸カリウムナトリウムには圧電素子としての性質があります。物質に圧力をかけると圧力に比例して表面で分極が起こる(その差が電圧となります)、圧電効果と呼ばれる現象があります。圧電効果を持つ材料を圧電素子と呼んでいます。

ロッシェル塩は戦時中、ソナーに利用され、海軍が重要な軍需物資として製造に力を入れた。同博物館によると、当時は「サドヤ」と、都内の民間研究機関の計2か所で集中的に製造された。サドヤに海軍技術研究所の分室を設置するなど、海軍はロッシェル塩の製造に大きな期待を寄せていた。


 とありますように、海軍はロッシェル塩にソナーとしての用途を見出していたようです。

 ソナーとは水中では音が減衰しにくいことを活かし、船の位置を音で探る機器です。特に目視の効かない潜水艦にとっては、ソナーこそが敵や味方の位置を探るための主要な機器となります。因みに、自ら音波を発振して相手に当たって跳ね返ってきた振動を感知する方法をアクティブソナー、相手の音を聞き取ることに特化したソナーをパッシブソナーと呼びます。アクティブソナーには自分の知る音波を利用できる利点がありますが、自分の存在を相手に知られる欠点もあります。海底の地形を探る場合や、水中で停止している相手を探る場合にはアクティブソナーが使われます。

 音は圧力の強弱が媒質中を伝わる現象です。圧力の強い・弱い、振動数が高い・低いが音の違いです。酒石酸カリウムナトリウムは圧電素子ですから、この圧力を感じ取って、信号にすることが可能なのです。

 ワインすら兵器の材料に転用しようとする材料科学には驚きを隠せません。大変に面白いニュースでした。
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古代ギリシア トロイア戦争13 木馬作戦の成功とトロイアの総領プリアモスの死

 ただし、誰もがアカイアの作戦に騙されていたわけではありません。騙されなかった1人がラオコオンですが、アテナが彼の目を潰し、海からヘビの怪物を派遣して彼の子を飲み込ませてしまい、黙らせます。そしてもう1人が、王女カッサンドラでした。彼女は、パリスがヘレネを連れてきた時にも受け入れるのを反対していましたね。そのカッサンドラは、木馬によってトロイアが滅ぶ、と正しく未来を予見しますが、誰も彼女を信じません。遂には自らの手で木馬に火をつけようとするのですが、それも妨げられてしまいます。

 どうしてカッサンドラは未来を正しく知ることが出来たのでしょうか?どうして彼女は正しかったのに誰も彼女を信じてくれなかったのでしょうか?そこにも神々の戯れがありました。

 惚れやすいのになかなか思いを遂げることができないフラレ男の守護神とも言えそうなのがアポロンです。アポロンはカッサンドラに言い寄り、我がものとするために彼女へ予知の能力を与えます。しかし、カッサンドラはその予知の力により、アポロンが自分から去っていくことを知り、アポロンの愛を拒みます。逆上したアポロンは、カッサンドラの予言を誰も信じないという呪いをかけてしまったのです。トンでもない神様ですよね。現代風に言い換えればリベンジポルノに近いのではないかと思えてしまいます。

 なお、アポロンは他にもフラレるネタには事欠きません。川の神の娘ダフネに求愛しますが、ダフネは逃げた挙句に月桂樹へと姿を変えてしまったり、妖精アカンサスには愛を拒まれ続けたり、ようやく手に入れたと思ったアスクレピオスを嫉妬から自らの手で殺してしまったりと不幸続きです。仲良くなった男の子ヒュアキントスですら、西風の神であるゼピュロスの吹かせた風のせいで、アポロンの投げた円盤に当たって絶命してしまいます。なお、この際に流れでた血から赤い花が咲いたため、彼の名をとってヒアシンスと呼ぶことになったそうです。項羽敗亡の際に自殺して果てた虞美人が葬られた墓に、翌年鮮やかに咲いたヒナゲシを虞美人草と呼ぶようになったのと似ていますね。

 木馬が引き入れられた夜、トロイアの城内が戦勝に酔い、無防備になった隙に、シノンは1人城壁に立ち、潜んでいたアカイア勢に攻め寄せるよう合図を送り、次いで木馬を開いて仲間を解き放ちます。

 好機到来を待った勇士たちは、閉じられていた城門を開け放ってアカイア勢を城内へ導くと同時に、一気に城の中枢へ攻め入ります。多くの男達は酔っていたためにまともな抵抗もできないまま、アカイア勢の蹂躙を許します。トロイアの主、プリアモスはアキレウスの子ネオプトレモスによって討たれました。


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2015年11月02日

古代ギリシア トロイア戦争14 オデュッセウスの愛欲に塗れた放浪の10年

 こうした時、男は殺され、女子どもは奴隷にされるのがセオリーです。しかし、ヘクトルの幼い息子は許されませんでした。ネオプトレモスがヘクトルの妻アンドロマケの胸から引き剥がし、城壁の上から投げ落として殺してしまったのです。いくら父の仇に連なる者だからとは言え、やり過ぎだと思ってしまいます。そして、アンドロマケはネオプトレモスが引き立てます。カッサンドラは小アイアスに陵辱され、アガメムノンのものとされました。

 ヘレネの再婚相手デイポポスはメネラオスに討たれます。こうして久方ぶりに再会したかつての妻を一度は殺そうとするメネラオスですが、彼女の美しい姿を目にすると怒りは消え、結局元の鞘に収まります。女性が最も殺されやすいシチュエーションは、新しい男と一緒にいるところを元の男に見られた時ですから、ヘレネは幸運だったと言えましょう。

 トロイアはこうして滅亡し、生き残った戦士たちはアカイアへ帰還することになります。

 しかし、戦いには生き残ったものの、遂に故郷へは辿り着くことができなかった者もいます。小アイアスはカッサンドラを陵辱した罪で女神の怒りを買い、荒れた海で命を落とします。

 また、オデュッセウスはポセイドンの怒りにより、故郷に帰れないまま10年間放浪することを余儀なくされました。かつてポセイドンはゼウスと地上の覇権を争ったことがあり、その罰としてトロイア王に仕えて城壁を築いた経緯がありました。高さ7メートルにもなると謳われた城壁は、神が作ったものだったのですね。そうした思い入れのある都市を破壊したオデュッセウスをポセイドンは許さなかったのです。……やや逆恨みっぽい気もしますけど。

 オデュッセウスの放浪の10年は、キュクロプスと戦いたった1つしかない目を潰してしまうことで勝利したり、セイレーンの歌声に打ち勝ってセイレーンを自殺させてしまったりといった冒険に満ちたものです。

 ただ、こうした命がけの戦いばかりだったら苦難の旅と言えるのですけど、そうではない話もあるのですよね。

 魔女キルケーの島では、キルケの魔法をことごとく打ち破た後に2人は恋に落ちます。結局、彼女のもとには1年間留まり、子どもも設けます。更に、海の女神カリュプソの島でも相手と相思相愛となって、なんと7年間も留まり、子どもも2人得ます。

 10年のうち合計8年は女性と一緒に過ごしていた上に2人の女性との間に3人の子どもを作っていたわけですから、あまり大変な冒険とは感じられないような……。

 それでも故郷に帰るため、オデュッセウスは妻子を捨てて海に乗り出します。冒険の終盤、オデュッセウスの船はポセイドンに沈められ、パイエケス人の島に漂着します。そこで王女ナウシカアの助けを借りて、故郷に帰ることができるのです。なお、『風の谷のナウシカ』はこのナウシカアから名前を貰ったとの由であります。


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2015年11月03日

古代ギリシア トロイア戦争15 夫のオデュッセウスが愛人と交歓中も貞節を貫くペネロペ

 オデュッセウスが愛欲に塗れた日々を送っていた頃、妻のペネロペは押し寄せる求婚者を退けるのに大変でした。彼女は、織りかけの織物が織り上がったら誰かと結婚すると告げます。そして、昼間は織物を織り、夜になると解いて元通りにしていました。まるでナチスがソ連捕虜に対して行っていたという、穴を掘っては埋める作業を繰り返させる作業(後にソ連が拷問として取り入れました)みたいですね。彼女が発狂しなかったのは、目的意識があったからでしょう。男たちがそのカラクリに気づくのは3年も経ってからです。どうかしています。しかも、ペネロペが織っては解き織っては解きしていたころ、オデュッセウスは別の女性(時期的にカリュプソと)悦楽の日々を送っていたわけですから、不条理感が際立ちますね。

 策を見破られたペネロペは、夫が残していった剛弓を引ける者と結婚すると宣言します。オデュッセウスが探しに来た息子に連れられて帰ってきた時にはこのような状況でした。

 求婚者たちは次々に弓を引こうとチャレンジしますが誰も引けません。そこへ乞食に扮したオデュッセウスが現れ、自分にもやらせてくれと頼みます。許可を得た途端、彼はその剛弓で求婚者を皆殺しにしてしまいました。

 オデュッセウスの怒りの矛先は、妻を奪おうとした男たちだけではなく、彼らを止めなかったペネロペの侍女にも向かいます。侍女たちは絞首刑にされてしまいました。

 愛人たちとやりたい放題だったオデュッセウス、ちょっと勝手すぎる気がします。特に、彼が20年もの間、姿を見せなかったことを考えますと、ペネロペがおとなしく待っていたことがむしろ不思議です。

 尚、ホンダのオデッセイは、このオデュッセウスに因んで名付けられたそうです。



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2015年11月04日

古代ギリシア トロイア戦争16 帰還したアガメムノン、妻のクリュタイムネストラとその愛人に殺される

 生きて故郷に帰っても、栄光に包まれた生を送れなかった者もいます。

 アカイアの総大将、アガメムノンは帰国当夜に后とする予定だったカッサンドラ共々、妻のクリュタイムネストラとその愛人アイギストスに殺されてしまいます。クリュタイムネストラは、娘イピゲネイアを殺したアガメムノンを許していませんでした。そして、アイギストスと言えば、アガメムノンとメネラオスの父アトレウスを殺した人物ではありませんか。クリュタイムネストラは随分と因縁のある相手を愛人としていて、見事に暗殺を成功させたのでした。

 非業の死を遂げたアガメムノンですが、ギリシアの王たちを率いて他国を制圧した功績から、ローマでは尊敬されていたそうです。

 クリュタイムネストラは子どもを愛した母親のようですが、必ずしもそうとは言えません。彼女はアガメムノンとの間に生まれた息子のオレステスによる復讐を恐れ、彼を殺そうとします。クリュタイムネストラはタンタロスとの間の子であるイピゲネイアは愛していましたが、アガメムノンとの間に生まれたオレステスと次女エレクトラは愛していなかったように感じられます。彼女の境遇を思えば、それも不思議なことではないかもしれませんが。

 オレステスは出奔して母の魔の手から逃れます。後にエレクトラの手も借りて城に入り込み、アイギストスを殺害します。白刃を翳して迫る息子に、クリュタイムネストラはこの胸でお前を育てた母を殺すのかと詰りますが、オレステスは友の助言もあり、母を殺します。

 こうして見ますと、ギリシアで女性の地位が低かったことを反映してか、父殺しは何としても避けるべき冒涜ですが、母殺しはそこまで忌避されるものではなかったように見えてしまいます。

 アガメムノンの一族は血で血を洗う争いを繰り広げてきたわけですが、一応はこれにて終わりとなります。アガメムノンの息子オレステスがアキレウスの息子ネオプトレモスを殺すことになる物語もありますが、ここでは置いて、別の話に行きましょう。


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