2015年09月01日

古代ユダヤ 聖書絶対主義1 聖書が絶対的に正しいと無駄な努力を重ねたニュートンと、ヴェリコフスキーの『衝突する宇宙』

 意外かもしれませんが、かのニュートンも聖書の絶対性を証明しようと、今日的な観点からすれば無駄な努力を行った1人です。彼はエジプト史についても聖書を基礎に見直しを図っています。自らの力が大である天文学を駆使して、聖書に書かれている歴史的な出来事の真相を掴もうとしました。それでもエジプトの歴史は長過ぎます。ニュートンは、無理やり多くの王を居なかったことにして辻褄を合わせています。例えば、第22王朝のファラオ、シシャクは、第1王朝の始祖メネス(またはナルメル)と同一視されてしまいます。聖書にはそれより前にイスラエルを支配したファラオの記録がないから、と。それ以前の王は存在を抹消されてしまいました。あんまりな話ですよね。

 既に述べたように、聖書にはとても客観的な事実であったとは思えないことが多数書かれていますから、彼の努力は徒労に終わります。ニュートンのような優れた頭脳がこうしたことに費やされてしまったのは残念です。

 こうした努力の内、もっとも荒唐無稽なものに属するのが、イマヌエル・ヴェリコフスキーの主張でしょう。彼は神話や伝説を渉猟して書いた『衝突する宇宙』の中で、聖書に見られる奇跡は全て実際に起ったことであり、それらは金星や火星といった惑星との異常接近によって起こったことだと主張したのです。

 金星や火星の軌道は安定しているではないかと思われるでしょう。しかし、彼は驚天動地の仮説を持ち出します。なんと、金星は木星から飛び出してきた彗星で、火星の軌道を狂わせたり地球に接近して異常現象を引き起こした、というのです。

 まず、この金星の誕生はゼウスからアフロディーテが誕生したというギリシア神話に一致する、と言います。木星を表すJupiterはローマ神話の主神ユピテルに由来し、ユピテルはギリシア神話のゼウスに相当します。アフロディーテはローマ神話のヴィーナス(ウェヌス)で、金星は彼女の名で呼ばれます。

 木星から飛び出した金星は彗星となって太陽系を駆け巡ります。地球と接近した時、聖書にある奇跡が起こった、とヴェリコフスキーは主張したのです。



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2015年09月02日

古代ユダヤ 聖書絶対主義2 モーゼの出エジプトは彗星の潮汐力が可能にした?ヴェリコフスキーの妄説

 ヴェリコフスキーに従うと、例えばモーゼの出エジプト時に海を割ったのは彗星の潮汐力ですし、ヨシュアがイスラエルの民を率いてアモリ人を攻撃した際に太陽と月にその場に留まれと命じたところ、その通りのことが起こり、アモリ人を打ち破るまで太陽は空に留まったという話は、彗星の異常接近によって地球が実際に自転を止めたのだ、としたのです。

 もしも地球が自転を止めたらどうなるでしょう?

 一瞬で地球の自転が止まったとします。地球は静止しても、地球上のあらゆるものは慣性の法則によって自転と同じスピードで動こうとしますので、止まってしまった地表から放り出されます。

 どれくらい放り出されるのでしょうか。赤道で考えてみましょう。赤道面における地球一周の長さは4万キロです。ということは、赤道上では全てのものは地球の自転に伴って、24時間で4万キロを移動することになります。計算しますと、40,000km/24h=1667km/h=28km/min=463m/sとなり、音速以上のスピードで動いているわけです。地球が一瞬で停止したら、全てのものはこのスピードで空に飛ばされてしまうわけですね。これがどれくらいのスピードかといいますと、拳銃の初速がおよそ360m/sなので、弾丸を追い抜けるくらいだと思って頂ければ良いでしょう。ちなみに、ライフルの初速は800m/sほどありますので、ライフルの弾に追い付くことはできません。

 ただ、地球の重力を脱して宇宙へ達するためには7.9km/sが必要ですから、宇宙までは行けませんね。空気による摩擦を考えなければ、飛び出したものは463-gt=0(g:重力加速度 t:秒)となるまで、およそ47秒間上昇し、上空10,824mに到達します。地上に落ちた時には秒速463mで地面に叩きつけられますから、大抵のものは跡形もなく破壊されてしまうでしょう。もっとも、地球には空気がありますから、どれほど高空にまで跳ね飛ばされても落下速度は終端速度にしかなりません。破壊されてしまうという現実は変わりませんけど。実際にはここで計算したように鉛直方向へ飛ばされるわけではなく、接線方向に飛ばされます。計算はかなり大雑把なものだと思って下さい。

 上記の通り、一瞬で地球が止まったとすると、戦争のように悠長なことはしていられません。人類は滅亡してしまいます。しかし、時間をかければどうでしょう?463秒かけて地球が自転を止めたとしましょう。すると1秒あたりの減速は1mで済みます。463分(約8時間)かけて停止したとすれば、1/60mに過ぎませんから、カタストロフは避けられそうです。


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2015年09月03日

古代ユダヤ 聖書絶対主義3 もしも地球が自転を止めてしまったら、人類は滅亡する!

 問題は、自転の停止に伴う猛烈な摩擦熱の発生で、海水が沸点に達すると計算されています。これだけでも地球上の多くの生命を絶滅させるに足りるでしょう。しかも、この後は当分の間、マントルの動きが激しくなりますから地球は大規模な地震や火山の噴火が止まらないでしょう。

 更に問題があります。静止した地球はどうやって再び動いたのでしょう?それも、静止する前と同じ速度で。そんな無茶が起こったとするよりも、これは神話であって事実ではないとするのが良識ある者の態度でしょう。こう問い詰められても、「神がカタストロフを防いでくれた」と主張する人がいるそうですから、信仰が人を盲目にする力には恐れ入ります。

 ヴェリコフスキーの主張は、聖書は絶対に正しいとする宗教右派には熱烈に歓迎されましたが、科学者から猛烈な反発を受けました。『衝突する宇宙』の出版社が教科書も出していたことから、一部の科学者は教科書の執筆のボイコットを宣言するような騒ぎになりました。冷静で詳細な反論を行ったのは、天文学者のカール・セーガンが有名です。

 特に、木星から金星サイズの惑星が飛び出るための条件を計算しているところは本職の天文学者らしい徹底さを感じさせるものです。木星からの離脱速度は60km/sにもなるのに、木星の位置における太陽系からの離脱速度は63km/sというのを見ると、彗星が偶然この間に入るのは極めて難しそうです。おまけに、離脱時のエネルギーの一部は熱に変わります。その熱量は岩石を融解させるのに十分ですので、全て溶けてしまうことでしょう。いえ、実はそれ以前の問題なのです。なぜなら、金星ほどの質量を離脱させるためのエネルギーは10^41ergsにもなります。これは太陽が1年かけて生みだすエネルギーの総量に当たります。木星表面でそれほどのエネルギーが発散されれば、木星そのものが破壊されてしまいます。


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2015年09月04日

古代ユダヤ 聖書絶対主義4 広く浅く間違いを集めれば、多くの人をだますことができるということ(こ、このブログは違いますよ!)

 このようなことが本当に起こるのでしょうか?そのようなわけはありませんね。批判の詳細を知りたいという方は、セーガンの『サイエンス・アドベンチャー』をぜひご覧ください。

 科学の立場から批判したセーガンと、セム学の教授が話をしたことがあります。その教授は、「あの本に出てくるアッシリア学やエジプト学、聖書学、タルムードやミドラシの法解釈論議などはもちろんナンセンスにすぎないけれども、天文学的解釈には感銘したよ」(上掲書より引用)と述べたそうです。文系の人は「文系分野はデタラメだが理系分野は凄い」と思い、理系の人は「科学分野はデタラメだが文系分野は凄い」と思っていたわけで、つまるところは広い分野からネタを継ぎ接ぎした、ナンセンスの寄せ集めだということです。もっともらしく引用を重ねているから非専門家は騙されてしまうのです。

 幸い、現代は怪しいと思ったらすぐにネットで検索することができます。そうした努力は怠らないようにしたいものです。

 神話からは離れましょう。

 イェルサレム近辺に都市が発達していたことは、紀元前19世紀の古代エジプト文書にみることができます。カナンと呼ばれていた時代です。ユダヤ人の先祖として、イスラエル人として現れる最初の記録もまたエジプトが残しています。第19王朝のメルエンプタハがリビアにあった国を滅ぼした記念に石碑を建てています。ここにフルリ人らと共に滅ぼされた民族として取り上げられているのです。

 メルエンプタハの即位5年のことですが、彼が即位した年代については確定されていませんので、これが起こったのもとりあえずは前13世紀であると理解しておきましょう。イスラエル人は、少なくともこれより以前からカナンの地、今で言うパレスチナに住んでいたことははっきりしています。


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2015年09月05日

ブックガイド19 旧約聖書の時代の考古学と、原理主義の危険性、そして包茎を切るべきではない理由について

図説 聖書考古学 旧約篇 (ふくろうの本) -
図説 聖書考古学 旧約篇 (ふくろうの本) -


 聖書が語ることは全てが歴史的事実ではありません。一方で、全てがフィクションでもありません。では、歴史学は聖書の世界をどう解き明かしてきたのでしょうか。

 本書では、歴史学から見た聖書の時代を多くの図版を使いながら解説しています。ユダヤ人がカナンに広まった時期に、一神教を奉じる都市が現れ始めたことは事実のようです。南部の都市がユダヤ人の支配下に入り、北方まで徐々に浸透していったことは聖書の士師記に記されています。これらは都市様式の違いから事実とされているようです。

 エジプトで異民族の支配者ヒクソスを駆逐する際の混乱に紛れて出エジプトがあったとする考え方があります。もしこれが正しいなら、エジプトの記録に出エジプトに相当する記事がない理由も説明していることになるかも知れません。少なくとも、セム系の奴隷がエジプトに居たことは確認されているわけですから。

 歴史が少しずつ明らかにされていくところを見ることが出来るのも嬉しいところです。


サイエンス・アドベンチャー〈上〉 (新潮選書) -
サイエンス・アドベンチャー〈上〉 (新潮選書) -

サイエンス・アドベンチャー〈下〉 (新潮選書) -
サイエンス・アドベンチャー〈下〉 (新潮選書) -

 天文学者で、一般向けの優れた科学書を多く残し、非合理的な考えに反対するサイコップのメンバーとしても活躍したカール・セーガンが、懐疑的な立場から、色々な話題を取り上げています。

 聖書に書かれたことは荒唐無稽に見えても全て歴史的事実であると唱えたヴェリコフスキー批判もその1つです。もっとも、聖書が絶対であると考える人は、少なくとも日本では少数派でしょうし、ヴェリコフスキーも決して有名ではありませんから、その批判を読んでも今となっては無意味であるかも知れません。

 しかしながら、不合理な考えは日本でも多く見られます。おかしな情報に騙されないために、思考力を鍛えておくには今でも価値があると思います。



切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実 -
切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実 -

 男性誌などでは恥ずかしいことのように取り上げられる包茎ですが、日本人のほとんどを占める仮性包茎は外国では包茎にカウントされないというのはご存じでしょうか?おまけに、包皮の先端には神経が多数通っており、どうやら性感帯としても働いているというのです。

 生誕時に先端をカットする手術が自動的に組み込まれてしまうようなアメリカでは、むしろ包皮再生を行う男性がいるそうなのです。そして、包皮がある男性、ない男性と行為を持った女性からの声ではある男性のほうが評価が高いというのはご存じでしたか?

 知らないことばかりで驚きの連続でした。

 ユダヤ人は割礼という文化を共有することで、他の文明から自分たちを隔てました。しかし、包皮にも自然選択が働いており、不要な器官ではないという本書の記述を見ると、彼らはもったいないことをしているように思えてきます。

 中々語られない話題をきちんと根拠を持って語っています。コンプレックスを持っている人も、息子のそこが気になる母親も、そしてこれから悩む時期に入る若者も、切るより前にまずは読んでみて欲しいと思います。不要な手術によって無意味な不幸を生み出さないで欲しいと思った次第です。


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