2015年04月01日

ブックガイド3

牧夫の誕生――羊・山羊の家畜化の開始とその展開 -
牧夫の誕生――羊・山羊の家畜化の開始とその展開 -

 ヒツジやヤギの家畜化がどのように始まったのかを知るにはうってつけです。

 著者はヨーロッパから東アジアまで、広い範囲のフィールドワークを行い、そこから家畜化と搾乳について論じています。様々な疑問に対して、実体験に基づいた答えを出しているため説得力があります。乳の利用があったおかげでチーズやヨーグルトを楽しめるので、家畜化を始めた人たちには感謝です。

 乳を得る方法や、群れを率いることの苦労についても詳しく、遊牧民の生活を窺い知ることができるのが嬉しいところです。

 宦官制度についても書いてありますので、西アジアの歴史を知る役にも立ちそうです。

図説 世界史を変えた50の動物 -
図説 世界史を変えた50の動物 -

 動物を利用することは、狩りの助けであったり、害獣の駆除であったり、食料の確保であったり、果ては軍事力であったりと、非常に大きな意味を持ちました。

 本書はタイトル通り、世界史を変えた50の動物について、それが何で、どのように人の世を変えたかを解説してくれています。イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラクダといった、役に立つ生き物もいれば、恐るべき病原体であったり、病原体を媒介して人類に苦痛を与えてきた生き物もいます。愛玩動物もいれば、染料となる生き物もいます。

 こうした動物なくして人類文明はありません。益獣、害獣含め、他の生き物がいなければ人間は行きていけないのだと感じさせてくれます。

雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史 -
雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史 - 雑食動物のジレンマ 下──ある4つの食事の自然史 -
雑食動物のジレンマ 下──ある4つの食事の自然史 -

 アメリカでは、平均的なスーパーに並ぶ4万5千点の商品の4分の1にトウモロコシが入っているそうです。もちろん、アメリカ人がトウモロコシばかりを食べているわけではありません。コーンシロップのように、姿を変えたものが使われているのです。しかも、大量に。果糖ぶどう糖液糖とも言われるこの甘味料の濫用が、大量の糖尿病患者を生み出しているのです。

 どうしてこんなに人は甘いモノに弱いのでしょうか。それは、脳が糖分しか栄養に出来ないからです。そして、営利企業はそれを上手く利用しています。

 本書は、このように私たちの本能に根ざした好みに合わせるために、食料生産の現場で何が起こっているかを解説しています。トウモロコシやダイズはまだ良いのですが、動物に対する扱いは、まるで工業製品に対するものと同じようで驚かされます。できるだけ少量の餌で早く太らせ、出荷するという目的に合わせて、ベルトコンベア式に生物が消費されていく現状は、知っておいても良いでしょう。

 肉は、雑食性である私たちにとって優れた栄養源です。ですが、全人類に供給するには、人口は多すぎるのでしょう。きっと、必要悪なのだろうと思います。それを踏まえた上で、適切な対価を払うことが私たちにできることではないかと感じました。アグリビジネスの現状を知るのにうってつけです。

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2015年04月02日

有史以前 家畜化 ウマ1

 ウマは、蹄が奇数である奇蹄目と呼ばれるグループに属しています。ウシとその仲間は偶蹄目と言い、奇蹄目と偶蹄目は蹄があることを共有するのですが、面白いことに両者は進化的には近縁ではなく、奇蹄目は偶蹄目よりも食肉目に近いとされています。

 北アメリカが原産だと言われますが、野生種のウマは北米では絶滅し、いま私たちが見ることができるのはユーラシア大陸に渡って生き延びた一握りの種に過ぎません。奇蹄類は、原生種では他にサイとバクを数えるのみ。ウマ科はウマ属ただ一つしか残っておりません。そのウマ属に属するのが、ウマ、シマウマ、ロバです。シマウマは伊達にウマを名乗るわけではないのですね。

 ウマが人類史に与えた影響の大きさたるや、想像を絶するほどのものがあります。

 それは、ウマの牽引力、速度、そして破壊力が並外れていたためでしょう。遥か後の話になりますが、南米を侵略したスペイン人のフランシスコ・ピサロが僅かな手勢でインカ帝国を滅ぼすことができたのは銃の威力にあったのは間違いないでしょうが、ウマもまた大きな要因であったと、人類学者ジャレド・ダイアモンドはベストセラーになった『銃・病原菌・鉄』で指摘しています。

 因みに、ギリシア神話には上半身が人で下半身がウマというケンタウロスという生き物が出てきますが、騎馬民族であるスキタイ人がその起源であるとする説があります。異論もあるようですし、上半身が人で下半身が魚である人魚や、エジプト神話に出てくる首から上が狼で下半身が人であるアヌビス神を考えると無理に騎馬民族に起源を求めなくても良いような気もしてきますが、説としては面白いですね。

 話がそれましたが、ウマの重要性を人が認識していたこと、ウマは賢い生き物なので人の側からも愛着をもって接していたことから、動物に付けられた最も古い名前として今に伝わっているものの一つがウマに付けられたもので、アレクサンドロス大王の愛馬、ブケパロス(ブーケパロスまたはブーケファラスとも)がそれです。他にも、三国志で呂布や関羽といった猛将が愛した赤兎馬や、曹操の愛馬・絶影は広く知られています。

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2015年04月03日

有史以前 家畜化 ウマ2

 紀元前6000年頃のウクライナの遺跡から、特別に埋葬されたと見られるウマの骨が見つかっています。馬銜(はみ)と呼ばれる道具が使用された跡があることから、このウマは野生馬を食用に狩ったのではなく、飼育馬であったと見られています。

 先に紹介しました『銃・病原菌・鉄』の中で、このウクライナでのウマの家畜化があったから人類は西進してヨーロッパに入れたのではないかとも指摘されています。もっとも、この地には既にクロマニヨン人がおりましたから、ウマの力は必要不可能なものではなかったとは思いますけど。

 ウマについて語るなら、なんといっても門歯と臼歯の間にある隙間、歯槽間縁について触れないわけには行かないでしょう。ここに棒を差し込み、棒に綱を結わえることで手綱が完成します。手綱によってウマのコントロールは格段にやりやすくなりますが、古代では手綱無しで騎乗戦闘していた例もあるそうですので、慣れの凄さを思わずにいられません。そうした超人的な努力は凄いことでしょうが、簡単にウマをコントロールする方法を生み出した知恵者を褒めたいと思います。

 さて、ウマが家畜とされたのには、その速度を利用したいという思惑があったのは間違いないでしょう。なにしろ、駅伝のようにウマも人も替えるのであれば、一日あたり300キロも進めたというのですから驚異的です。もっとも、人でもウルトラマラソンとして知られる長距離マラソンでは24時間で300キロオーバーという記録もありはするのですが。その記録を打ち立てたのはイアニス・クーロスというギリシアの方で、マラソンの語源となったマラトンの戦いを彷彿とさせてくれます。

 トロイアの遺跡を発見したことで知られるシュリーマンは実業家で、日本に来たことがあります。その時に、ウマと劣らぬ速度で長距離を走る青年を見たことが、後の大発見に結びついたそうです。

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2015年04月04日

有史以前 家畜化 ウマ3

 長距離を走り続けられるのは、汗腺を発達させて体温の上昇を防ぐことができるようになったためです。長距離マラソンに関しては、『脳が「生きがい」を感じるとき』では、脳が面白さを感じたがっているためであるとする説が紹介されています。脳の面白さを知るために、まず訪れるのがSMクラブという異色の本ですが、とても面白いのでお勧めです。

 話が逸れました。

 戦車は印欧語族の国と言われるミタンニ王国で生まれたと推測されています。もう少し後の話になりますが、エジプトの第2中間期と呼ばれる時代には、ヒクソスと呼ばれる人々がナイル川河口のデルタ地帯を支配します。彼らがエジプトに打ち勝った理由の一つに、戦車の使用が挙げられています。これについては後にエジプトを論じる際にも語ることにします。

 戦車に続いて、騎乗が一般的になっていきます。遊牧において、徒歩でもヒツジ100匹程度はコントロールできるそうですが、騎馬放牧ですとコントロール可能な数はなんと1300匹を超えるそうです。騎馬の機動力がはっきり分かりますね。騎馬そのものは戦車よりも古い時代から見られたそうですが、歴史を替えるような力を持つのは幾つかの道具が発明されてからのことです。

 乗馬はほとんどの人が経験したことが無いでしょうが、それでも競馬を見ていると様々な道具が使われていることが分かります。鞍、馬銜、蹄鉄、鐙、ムチ等々。これらが無ければあのような高速移動は困難でしょう。

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2015年04月05日

科学なニュース3 「千年前の薬で耐性菌が死滅 中世の医学書から再現」

 今回ご紹介するのはCNNが報じた千年前の薬で耐性菌が死滅 中世の医学書から再現というニュース。

薬品の成分はネギ属の植物2種(ニンニクと玉ネギまたは西洋ネギ)とワイン、牛の内臓から採取する胆汁。これを真ちゅうの容器で醸造し、9日間置いた後に布でこす。

同書には各成分の比率なども詳しく記述されていたことから、研究チームは9世紀に存在していたワイナリーのワイン探しも含め、その製法をできるだけ忠実に再現した。

出来上がった薬品を培養したMRSAに対して試したところ、抗ブドウ球菌薬に匹敵する効能があることが判明。バイオフィルム(生物膜)に守られて密集していた数十億の細胞が数千にまで減り、極めて強力な殺菌効果があることが分かったという。

米国の研究者に依頼して生体内での作用を検証した結果、従来の抗生剤を使った治療以上に効果があるらしいことも分かった。マウスを使った生体実験では、MRSA菌を最大で90%死滅させることができたとしている。


 1928年、フレミングが不注意を通り越して杜撰とも思えるような管理をしていた細菌培養シャーレで、青カビが発生し、その周囲では細菌コロニーが増殖していないことに気づきます。それがペニシリン、最初の抗生物質の発見でした。

 抗生物質を得たことは、人類にとって大きな福音でした。

 大の大人であっても、ほんの僅かな傷から入り込んだ細菌に感染すれば死のリスクがありました。特に戦場では、塹壕に篭っての戦いが多くあります。傷に土がつくと、土壌中の細菌により敗血症を起こすことが非常に多くありました。

 あるいは結核を考えても良いでしょう。以前は不治の病に近い状態で、そのためにオペラ『椿姫』や、『風立ちぬ』が有名ですね。主人公ないし重要な登場人物が死病に冒され徐々に衰弱して避けられない死へ向かって進んでいくという姿は、現在における白血病やエイズのような扱いだったと言えるでしょう。

 もっとも、白血病も随分と治療効果が上がるようになってきました。私の友人にも白血病となって今は元気になっている方が居ます。また、HIVは適切な投薬を受ければエイズの発症をかなり抑えることが出来ますから、むしろこうした病気よりも結核は重かったと言えましょう。

 結核死亡率を見ても、1950年は10万人あたりの死者が146.4人と死因のトップを占めます。それが抗生物質(ストレプトマイシン、略してストマイと呼ばれることもあります)やワクチン接種によって、ここ数年は2人以下となっています。

 しかし、細菌は黙って敗北していくような存在ではありませんでした。それが耐性菌の存在で、大きな問題となっています。

 耐性菌問題を論じる上で最も注意しなければならないのは、抗生物質の濫用の問題です。1週間分の薬を渡されても、2〜3日飲んで体調が良くなったら勝手に服用を止めてしまう患者、きちんとした検査もせずに安易に抗生物質を処方してしまう医療機関。更にアグリビジネスの現場では家畜が病死しないように大量の抗生物質を使用しています。

 細菌は猛烈な勢いで増えます。抗生物質は淘汰圧として働きますから、どんどん耐性菌が出来てしまうわけです。私たち自身も、薬に頼り過ぎないようにしなければならないでしょう。時間がある方は、是非迫り来る抗生物質の危機/ラマナン・ラクシュミーナラヤンもご覧になって下さい。

 耐性菌の中でも、院内感染の主役ともなるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は脅威となっています。病院は怪我や病気あるいは手術後といった、体力の低下した方が多くいらっしゃいます。そこに薬剤耐性を身につけた細菌が紛れ込むと物凄い脅威になるわけです。

 このニュースは、MRSAに効く予想外のものを紹介しています。特に興味深いのは、「バイオフィルム(生物膜)に守られて密集していた」細菌にも効果を発揮していることでしょう。このバイオフィルムは大変に厄介なもので、膜の内側にいる細菌には薬が届かないために、耐性菌が生じやすいのです。

 胆汁には界面活性作用があるとのことですから、うまく膜を分解して薬理作用のある物質を浸透させるのかもしれません。いずれにしても興味深い話です。

 あとは、ワインがどのようなものか、ですね。経口投与で効くのでしたら、毎日グラス一杯のワインは心臓疾患予防(※)以外でも人を健康にするのかもしれません。問題は、赤を飲むべきか白を飲むべきか、でしょうか。勿論、飲み過ぎはむしろリスクにしかなりませんから、飲酒は適量を守りましょう。


※やや古い記事ですが、”飲酒”がもたらす健康への影響に関する最新報告が数についてきちんと論じていて参考になります
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